この文章は、2005年9月16-18日に開催された日本臨床獣医学フォーラム 年次大会に参加した際のメモをもとに作成しています。 発表者は 赤坂動物病院 医療部長 石田卓夫先生 です。
ワクチンを妨害する要素 :
・動物が未発達であること
生まれたての赤ん坊の場合、生後24時間以内に初乳を飲むと母親からの免疫が100%血液中に入る。 これは、腸がまだ未発達であるからである。母親からのこの免疫を移行抗体という。この移行抗体が効いている間は ワクチンを打っても意味がない。移行抗体とくっついてしまい、ワクチンを異物として認識しないためである。 この移行抗体はいつまで残るか不明であり、最大で犬の場合では12−14週間残ることが報告されている。つまり、ワクチンが効きだす タイミングというのは測ることができない。したがって2回のワクチン接種により、ワクチンの効きを高確率のものにするのである。 ちなみに免疫系が成熟するのは4〜6週である。 |
* 健康ならワクチンは最大の効果が得られる。しかし、実際としては
・便の中に寄生虫がいるくらいなら打っても問題はない。(あわせて寄生虫は駆除しましょう。)
・少しのケガ程度なら打っても平気。
なぜなら、これはワクチンによる免疫系のプロセスに全く関係がないからである。
(ワクチンの使用説明書には、万が一のことを避けるために上記の場合による使用を認めない旨が書かれている。)
もちろんワクチンを打ってはならない場合もあり、その判断は獣医師に任せましょう。
ワクチン接種
初年度:
毎週打てばよいわけではなく、最低でも3週間あける必要がある。感染の機会さえ作らなければ、4週でもよい。
追加接種:
免疫の追加を期待するものである。適切に行えば、免疫の持続期間を継続することができる。
* ”適切に”の意味であるが、ワクチンはたくさん打てばよいというわけではない。
人間(アメリカの子供)を例にとると、
(ちなみに、人間のはしかは犬ジステンパーと同類であり、はしかのワクチンは犬ジステンパーにも効くようである。) これらのプログラムは、これで最適であるということが長年の経験・研究から分かっているのである。 60歳の人間にはしかや風疹のワクチンは必要なのか?というと、否なのである。 同じ事が動物にも言えるのではないだろうか。副作用の方が目立っている現状において毎年の接種は必要だろうか? という疑問が生じる。そもそも毎年の接種が必要であると言いだしたのは、とある昔の1人の著名な獣医師であり、 そこには科学的根拠はなかったという。したがって、ワクチン接種の見直しが必要であると思われる。 副作用には以下に示すようなものが挙げられる。
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犬のワクチン
全ての犬に必要なもの:
・犬ジステンパー
・犬パルボウィルス
・犬伝染性肝炎
*上記3つに関しては、9〜15年も免疫が有効であった子が存在したことが報告されている。
・狂犬病 (91日鈴以降に1回、その後毎年追加接種)
*混合ワクチンと狂犬病ワクチンの同時接種は行わない。
一部の犬に必要なもの
・レプトスピラ (夏に山や川に行くアウトドアな犬やネズミのいる環境の場合)
・その他の病原体
猫のワクチン
全ての猫に必要なもの:
・猫ウイルス性鼻気管炎(FVR)
・猫カリシウイルス感染症
・猫汎白血球減少症(FPL) 猫パルボともいう
*上記3つに関しては、7.5年も免疫が有効であった子が存在したことが報告されている。
一部の猫に必要なもの
・猫白血病ウイルス感染症(FeLV) :感染猫と長期同居やかみつかなければうつらない。
・その他の病原体
猫のワクチンプログラム
3種混合ワクチン
初年度は生後6週以降に1回目。その後は12週目までに3〜4週間隔で追加接種を行う。
追加接種は最後の接種から1年後に1回を行い、その後は3年間隔でおこなう。
猫白血病(FeLV)ワクチン
初年度は生後8週以降に1回目。3〜4週後にもう1度おこなう。
追加接種は年に1度であるが、感染の機会のない猫(完全室内飼い)に対しては必要ないと思われる。
--以上--
参考資料
ワクチンの種類・詳細についてはこちらから(ペットの病気大百科より)
<管理人より>
ワクチンが高い高いと思っている方もいるでしょうが、人間の場合だって保険適用でなければ、
病院で1本7000円ほどとられるそうです。動物は保険適用外ですが、
高くても3種ワクチンで7000円もかかりません。決して、動物用だから高いものというわけではないと思います。
適切なワクチン接種によって可愛い家族が感染の心配もなく健康でいられるなら、安いくらいではないでしょうか?
動物病院は病気を治すところではあるけれど、それ以上に病気を予防するところであるという認識で、主治医の獣医さんと
お話してみることの重要性を感じました。
筆:ありあり 2005年9月23日