この文章は、2005年9月16-18日に開催された日本臨床獣医学フォーラム
年次大会に参加した際のテキストとメモをもとに作成しています。
発表者は 日本獣医畜産大学 獣医放射線学教室 藤田道郎 先生 です。
呼吸異常の判断の仕方をお話してくれました。
呼吸異常の判断
「視て」分かる異常
@鼻呼吸か開呼吸か
犬猫は重篤にならないと開呼吸しないので、緊急性が高い。
・鼻に重度の閉塞性疾患がある。または、
・咽頭より下部の呼吸器系に酸欠が起こるほどの重篤な
疾患がある。→すぐに酸素吸入
↓
A鼻翼(小鼻の部分)あるいは鼻稜部が動いているかどうか
努力して呼吸している状態であり、病気があるのは確実。
緊急性は高くない。
↓
B舌の色はピンクか紫色か
紫の場合は低酸素血症(チアノーゼ)→即座に酸素吸入
なかなか舌を見るのは難しいので、歯肉の色や、
オス:ペニスの色
メス:膣の粘膜の色
を見てみる。
↓
C胸の動きが深いか浅いか
・深い・・意識して吸わないと苦しい状態
呼吸回数が遅い:鼻や咽喉頭に病変
呼吸回数が早い:気管、気管支、肺に病変
チアノーゼを呈していることが多い。
・浅い・・肺を十分に膨らませられない状態
30〜60/min:大気道(気管、気管支)に狭窄病変
60/min :肺あるいは胸腔内に病変
*開口・吸気時間が長いと要注意である。
努力していないと吸えない。
または努力しているけど肺に十分入らない状態。
↓
なお一層、努力して呼吸する
「聴いて」分かる異常
@吸気時のみに異常音
病変部は a.閉口時の異音:鼻
b.開口時の異音:咽喉頭、頸部気管
bだと、だいたいは熱が出ている。
直腸計測で39〜40℃くらいになり、すぐに病院に行く必要がある。
熱を放出できないため、熱中症になることもあり、涼しい部屋で
処置を施す必要がある。
A呼気時のみに異常音(聴診器で聞こえる程度)
病変部は胸腔内気管や気管支
B呼気時、吸気時ともに異常音
病変部は鼻以外。
*吸気時の異常では酸素吸入は効果大である。呼気時では効果小
である。二酸化炭素を排出できない状態のためである。
*ネコの方が緊急性が高い。呼吸の乱れは興奮・不安・肥満・
痛み・心疾患・貧血・発熱でもあるものなので、まずはこの
可能性を消すことをする。
それぞれのケース
@開口呼吸・長い吸気時間・チアノーゼ →咽喉頭または気管の異常
A開口呼吸・長い呼気時間・長い吸気時間→腫瘍や異物
B開口呼吸・浅い胸の動き・頭を上げて首を伸ばす姿勢→肺に問題
(酸素の吸入気道を確保している)
C鼻呼吸・浅い胸の動き・頭を上げる姿勢はなし→レントゲンで肺は白かった
↑Bと同じく肺の異常であるが、この子の場合は長期的な経過により
慣れてしまい、Bのような症状が見られなかったケースである。
--以上--
文献
藤田道郎,呼吸異常,第7回日本臨床獣医学フォーラム2005年 年次大会 プロシーディング Vol.7-2,
4-12〜4-13(2005)
<管理人より>
呼吸異常は放っといていいものでも、様子を見ていいものでもありません。
何をおいてもまず、獣医さんに行ってください。ここに記してあるのは、飼い主さんが緊急性の程度を
知るための目安です。酸素吸入の設備があるかどうかを確認してから行った方がいいでしょう。
獣医師にとっては、普段との違いが診断の大きなヒントになるそうです。普段からのペットの観察も必要ですね。
筆:ありあり 2005年9月28日