一からはじめるデンタルケア

 この文章は、2005年9月16-18日に開催された日本臨床獣医学フォーラム 年次大会に参加した際のテキストとメモをもとに作成しています。 発表者は 戸田動物病院 戸田 功 先生 です。

歯の構造

  •  歯肉は1〜2[mm]である
  •  歯と歯はぶつからないものである(かみ合わせ)
  •  上の歯と下の歯は、ハサミのようにすれ違い肉を切り裂けるようになっている。
  •  歯が割れるときは、パリンと割れる(雲母みないな割れ面)
  •  エナメル質は人間よりも薄く、再生不可
  • 歯周疾患

  •  犬では中・大型犬よりも小型犬の方が発生率が高い。

  •   (小型犬では乳歯と永久歯の交換期にトラブルが多い。)
  •  高齢なほど発生率が高い。
  •  歯垢内の細菌は全身に影響する。特にヒトと犬は心臓に影響

  •    増加因子・・高齢化、食生活、管理不足

    歯周病 : 奥歯に多い

  • 上顎第4前臼歯
  • 下顎第1後臼歯

  •   歯肉炎 : 歯槽骨の吸収を伴わない。歯肉だけの炎症。
       ↓
      歯周病 : 歯槽骨がなくなる→歯周ポケットのブラッシング

    歯石ができるまで
     ヌルヌルしたペクリルが生成
       ↓  6〜24時間後
     プラーク生成
       ↓  3〜5日後
     歯石生成

    <Check Point>

  • 口臭がする
  • かみ合わせが悪い
  • くしゃみ、鼻水
  • 眼下の腫大
  • 食欲不振
  • かみ方
  • 歯・歯肉など疼痛(ネコ)
  • 口内炎(ネコ)

  • →デンタルケアを一から始めましょう!

    <Q&A>
    (Q.1)
    歯の病気と体の病気は関係ない?

    歯の細菌が血液で体に回り、心臓、肝臓、腎臓に影響
    (例)アゴの骨髄炎 → 病的骨折 (よくアゴを折ってしまう)

    (Q.2)
    歯のために骨やひづめを噛ませた方がいい?硬いものをを噛ます事は歯を鍛えるのにいい?

    よくない。いつかは、歯を折る。エナメル質が薄いため、ハサミの刃が欠けるようにパリンと割れる。

    (Q.3)
    ボールやフリスビーが大好きで、よく噛んでいるからウチの子の歯は大丈夫?

    冠歯が削れてしまう。歯髄(神経)が露出しないようにせねばならない。
    フリスビーでも歯が折れる例はあった。
    テニスボールでも、歯が磨耗してしまう。(ヨダレで砂がついた状態のボールは特に。)

    (Q.4)
    おもちゃを噛ませているから歯磨きはいらない?

    必要。若い子はガーゼでよいが、歯周ポケットの菌を取り除くことが重要。

    (Q.5)
    歯ブラシはどんなのがいいの?歯磨き粉を使うの?ガーゼで歯を磨くことで充分?

  • ブラッシング

  •   ・人間用歯ブラシ(先細りで柔らかめの歯周用ブラシ、歯間用ブラシ)
        ↑人間の子供用は硬いので、使わないこと
      ・サック型歯ブラシ
      ・ガーゼ
      ・手袋
  • デンタジェル
  • ドライフード (ポリリン酸塩配合)

  • 歯ブラシは、歯周ポケットに対して45°にあて、よごれをかきだす。

    (Q.6)
    歯磨きはたまにやるけど、それでいい?毎日なんてできない。頻度はどのくらい?

    できれば毎日。
    小さい頃からの習慣である。ごほうびの直前にするなど、好きな行為にしてやること。 いやがらせない、絶対に怒らせないことが大切である。
    Step1
     口をめくるか、さわるか(1週間)
    Step2
     指に好物の味をつけて歯に触る(2週間)
    Step3
     歯ブラシやガーゼで少しずつ磨く
    Step4
     犬歯、切歯(門歯)からはじめ、徐々に全体へ

    (Q.7)
    フッ素は塗った方がいい?

    過剰摂取で中毒をおこす。
    病院ではやってくれる。

    (Q.8)
    犬とネコにも虫歯はあるの?

    ネコでは報告例はない。
    しかし、歯が壊される病気はある。
     ↑破歯細胞性吸収病巣(ネックリージョン)

    (Q.9)
    歯が欠けているけど、痛がらないから大丈夫?

    修復処置するべきである。

    (Q.10)
    乳歯が残っていて、歯が二重に生えているけれど、乳歯だからそのうち抜ける?

    歯並びが悪くなるので、すぐに抜く。
    <生え変わりのメカニズム>
    乳歯の根っこは永久歯が後ろから吸収していくので、乳歯の上のところのみ残って抜ける。

    (Q.11)
    歯にいい食事ってなに?

    ドライフード(だからといってブラッシングが不要なわけではない。)
    VOHC(米国獣医口腔衛生委員会)によれば、ポリリン酸塩配合のものがよい。
      → Hill'sのt/d など (高繊維である)
    カルシウムは、ある程度は必要だが、歯にとってはあまり意味はない。
    だらだら食いはダメである。

    (Q.12)
    毎年、病院で歯石をとっていれば歯磨きはいらない?

    必要。できれば毎日。

    (Q.13)
    麻酔をかけないで歯石をとってくれる?

    麻酔をしないと、全部はとれない。
    ・スケーリング
    ・ポリッシング
    ・ルートプレーニング←根をきれいにする。

    --以上--

    文献
    戸田 功,一からはじめるデンタルケア,第7回日本臨床獣医学フォーラム2005年 年次大会 プロシーディング Vol.7-2, 4-76〜4-77(2005)


    <管理人より>
    ウチの子達の中にも約1匹、歯茎のある部分が赤く腫れている子がいました。 そのせいか、ドライフードがその場所にあたらないように、丸呑みするような食生活でした。 こんな食生活は、いいはずありません。歯磨きはしていましたが、月に数回程度でいいと思っていました。 しかし、全然足りていなかったんですね。5日連続で歯磨きをしてみたところ、驚くほど赤い腫れが引きました。 そして、ドライフードもバリンバリンと音を立てて食べるようになりました。 気のせいかもしれませんが、美味しそうに食べています。 身体面でも精神衛生面でも、歯のお手入れはバカにできないですね。飼い主さんにしかできない事なのですから、 どんなに面倒でもやってあげましょう。

    筆:ありあり 2005年11月19日


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